法律相談のお問い合わせ
相続問題のポイント
相続について学ぶ
- 種類別相続手続きについて
- 1不動産
- 2借地権・借家権
- 3農地
- 4各種事業
- 5預貯金
- 6借金
- 7生命保険金
- 8死亡退職金
- 9ゴルフ会員権
- 10財産分与請求権
- 11公営住宅の使用権
- 12墓地などの祭祀承継
- 13遺産分割後の手続き
法律相談に関するQ&A
4 遺言の種類
(1)自筆証書遺言
自筆証書遺言はいつでもどこでも簡単に作成でき、遺言したことを秘密にしておけます。費用もほとんどかかりません。もっとも遺言を紛失するリスクもあり、発見されないことがあります。第三者によって変造、偽造される可能性もあります。検認の手続も必要です。検認手続が完了するまで1カ月ほどかかるため、葬儀に関する希望などを記載しても要望どおりにならないといったデメリットがあります。要件を満たさないものは無効になるリスクもあります。遺言書の一部が無効でも、他の部分は有効です。遺言書としては無効でも贈与契約書として有効とみる余地もあります。
自筆証書遺言は遺言者が自分の手で作成して署名押印するものです。署名は戸籍上の氏名に限らず、遺言者が通常使用している雅号や芸名でも遺言者との同一性が認められれば有効です。民法は自筆証書遺言に関しては遺言書の全文を遺言者が自ら自筆で書くことを要求しており、日付や署名のすべてが遺言者の自筆である必要があります。遺言は遺言者の死後に発効するもので、遺言者が本当に作成した遺言書か否かについて争いが生じても、遺言者本人に確認する方法がなく、間違いなく遺言者本人が書いたことを明確にするために自筆が厳格に要求されています。ワープロやパソコンを使っての遺言は効力がありません。フロッピーディスクなどに遺言の内容が入った状態はもちろんのこと、打ち出してあっても無効です。遺言本文が手書きでも、不動産や預貯金を記載した財産目録がワープロやパソコンで作成された場合は、遺言書全文が自筆ではないので無効です。これは遺言者が病気やけがなどで字が書けない状態でも自筆の要求は変わりません。
字が書けない場合は、遺言者が遺言書の全文を自筆する必要のない公正証書遺言を作成すればよいのです。公正証書遺言では公証人が作成した遺言書に署名をするだけで足ります。けがや病気で署名もできない場合には、その旨を公証人に説明すれば、署名しなくても公正証書遺言は作成できます。口がきけない場合でも、通訳人の通訳を介して公正証書遺言を作成することができます。自筆証書遺言の場合、遺言者が問題ないと思っていても、記載が不十分で遺言が無効になってしまう場合があります。遺言者の死後、家庭裁判所で検認手続きも必要です。公正証書遺言は、遺言者の意思が公証人によって確認されて作成されているので、ワープロでの作成が認められています。秘密証書遺言についても、署名は自筆しなければなりませんが、内容をワープロで作成することは可能です。
以下に具体的な書き方について説明します。
遺言書はどのような紙を使用してもよく、広告の紙の裏に書いても有効ですが、下書きの原稿であると判断される恐れがあるので避けるべきです。10年ほどでインクが消えてしまうコピー用紙よりも和紙などが確実といわれます。筆記具はボールペン、サインペン、万年筆、筆など何でも構いませんが、鉛筆は変造される危険が高いので避けるべきです。
数字の書き方は、アラビア数字でも漢数字でもどちらでもよいのですが、不動産の表示や金額の数字については、変造を避けるために多角漢数字を使用したほうがよいでしょう。
書き方は縦書き横書きのどちらでも問題ありません。
「遺言書」としての表題がなくても遺言書として有効です。
だれに何を相続させるか、遺贈するかはしっかりと特定する必要があります。表現は具体的にする必要があります。銀行口座は銀行名、支店名を明確にし、不動産は円滑な登記手続きのために住居表示上の住所ではなく不動産登記簿謄本の表示に従って記載すべきです。「あの家」「駅前の土地」などの表記は避けてください。「土地の半分を次男○○に相続させる。」では、土地の半分がどの部分かは特定できず相続人間で紛争が生じる可能性があります。争いを避けて土地を具体的に分割して相続させたい場合は、生前のうちに分筆登記をするべきです。
「左記建物を長女○○に使わせる。」という表現に関しては、「使わせる」という表現では、意味が明確になりません。所有権を譲渡するのか使用貸借の権利を与えるのかが明確にならないからです。「管理させる」「まかせる」などの表現も不明確ですので避けるべきです。所有権を譲渡するのであれば、「相続させる」「遺贈する」のどちらかの表現を使用するべきです。全財産を渡すという遺言をした場合は、預金債権を引き出す際に金融機関から相続人全員の署名・捺印を求められます。
修正・変更がある場合は、修正・変更する箇所に押印し、上部余白に修正・変更した箇所と内容を付記して署名します。何行目のどの字をどのように変更したのかを遺言書の余白に書き、変更を指示した箇所にその都度署名します。書き間違い部分を訂正し、訂正部分に印を押します。この方式を履践していない場合は、変更や修正がないものと扱われます。変造を防ぐために極めて厳格な方式に従って訂正する必要があるのです。
遺言の最後には日付を記載して署名をします。年月日のない遺言は無効です。日付は具体的な日時で記載する必要があり、○月吉日という書き方では遺言書が無効となります。署名に関して代筆は無効で、署名とともに押印も必要です。遺言者が他人に手を支えられて書いた場合や、外国語や略字で書いた場合も遺言者の意思と認められる限りは有効です。「遺言者 甲野太郎 遺言者 甲野花子」などと2人以上のものが共同で1通の遺言書に書いた遺言書は無効です。夫婦でも別々に書く必要があります。印鑑は三文判でも構いません。
遺言書が複数枚に渡るときはホチキスかのりでとじ、契印を押します。
保管の形態は特に決まっておらず封筒に入れる必要もありませんが、書き終えたら遺言書を封筒に入れ、のりづけし、封筒の表に遺言書と書くのが一般的です。保管場所としては、銀行の貸金庫や弁護士などに預けるという方法があります。
(2)公正証書遺言
公正証書遺言はまず、本人が原案の文章を作ります。内容はメモの形式でもよく、原案を公証役場とファックスでやり取りできます。原案が固まったら公証役場に出向いて公証人が書いた文面を確認します。後日、証人2人以上の立会いのもと、公証人が口授する公正証書遺言の内容を最終確認し、公証人、証人、本人の全員が署名・押印します。 遺言者が署名できないときは、公証人がその旨を付記して署名に代えることもできます。公正証書遺言は遺言者が自筆する必要がなく、自筆証書遺言や秘密証書遺言と異なり、まったく字が書けない人でも遺言書を作成することができます。口がきけない人でも、公証人および証人の前で遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述するか自筆することにより口授に変えることができます。さらに筆記内容の確認方法が閲覧でもよく、通訳人の通訳によって遺言者に伝えることで読み聞かせに変えることもできますので、耳が聞こえない人でも公正証書遺言を利用できます。なお公正証書遺言は、公証役場で作成するのが原則ですが、病気などの場合、日当を払えば公証人が家や病院に出張してくれます。
証書のコピーは遺言者本人に手渡され、原本は公証人役場に5年間保存されます。遺言者の存命中は本人しか見ることはできず、死後も利害関係人しか見ることができません。公正証書遺言は、専門家である公証人が作成してくれ、原本が公証役場に保管されるので確実です。作成後変造される危険もほとんどありません。他の遺言では相続の開始後に遅滞なく家庭裁判所に検印を請求する必要がありますが、公正証書遺言は検認の必要がありません。証人2人の立会いの下、公証人によって遺言者の意思を確認しながら作成されることから、遺言の効力が問題となる可能性も少ないからです。家庭裁判所の検認が不要なので、相続発生後にすぐに相続手続きに入ることができます。もっとも公証人手数料がかかり、遺言書の作成と内容が第三者に知られてしまいます。公正証書は一番確実性が高いといわれますが、遺言者が死亡しても遺言書をもってきてくれるわけではありません。公正証書遺言があることを貸金庫などに保管する書類に書いておくとよいでしょう。
公証人役場では平成元年以降、公正証書遺言を登録するシステムを採用しており、当該遺言に利害関係を有する者の求めにより検索に応じています。
(3)秘密証書遺言
秘密証書遺言は遺言の内容を遺言者以外に知られることなく作成できます。自筆証書遺言は、全文、日付および氏名を自筆して押印するものであることから、遺言の内容はもちろん、遺言を作ったこと自体も秘密にすることができます。公正証書遺言は、2人以上の証人などに遺言の内容を知られてしまいます。秘密証書遺言は、封印した遺言を公証人と証人2人以上の前に提出して公証してもらうので、遺言の存在を秘密にすることはできませんが、遺言の内容を秘密にすることができます。遺言の内容を秘密にする遺言の方式としては、自筆証書遺言と秘密証書遺言の2つがありますが、遺言の存在自体を秘密にしなくてもよいのであれば、遺言の存在を公証してもらう秘密証書遺言の作成による方が望ましいです。
秘密証書遺言は自筆でも構いませんし、第三者に代筆してもらってもワープロを使っても構いません。
自筆による署名・押印は必要ですが日付は不要です。修正・変更は自筆証書遺言と同様の方法です。
証書は封筒に入れて証書と同じ印章で封印します。封入と封印は遺言者が自分でする必要があります。封印ができたら公証役場に行き、公証人1人と証人2人以上の前に封書を提出して遺言者であることを申術します。第三者が書いた場合は、筆者の住所・氏名も述べます。公証人が証書の提出された日付と遺言者の申述を封書に記載した後、遺言者、公証人、証人がともに署名押印します。口がきけない遺言者は、公証人および証人の前でその証書が自分の遺言である旨や筆者の氏名および住所を封筒に自筆して申述に代え、公証人がこの方式を踏んだ旨を封紙に記載して、申述の記載に代えることで秘密証書遺言を作成することができます。公正証書遺言と異なり、公証人は秘密証書遺言を保管しません。自分で保管する必要があります。
秘密証書遺言は遺言書の内容の秘密を守れることと代筆やワープロも認められるという利点がある反面、作成に手間と費用がかかり、検認手続も必要である不利益があります。
形式に不備があれば秘密証書遺言として無効ですが、自筆証書遺言としての要件を備えていれば自筆証書遺言として有効です。
| 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
|---|---|---|---|
| 利用できない人 | 字の書けない人 | 原則として誰でも利用可能 ※意思能力は必要 |
字の書けない人 ※自己の遺言である旨、住所、氏名がかければよい |
| 作成 | 本人 |
公証人( |
誰でも可 ※本人が望ましい |
| 作成場所 | どこでもOK | (原則)公証役場 |
どこでもOK ※封印後の手続は公証役場 |
| 証人 | 不要 | 証人2人以上 | 公証人1人 証人2人以上 |
| ワープロ等 | 一切不可 | 可 ※署名は自筆 | 可 ※署名は自筆 |
| 日付 | 要 | 要 | 要 |
| 署名・押印 | 本人 | 本人 証人・公証人 |
本人 公証人・証人(封紙) |
| 印鑑 |
実印・認印・拇印 ※いずれも可 |
実印 |
本人は遺言書に押印した印鑑
証人は認印でも可 |
| 封印 | 不要 ※封入しておく方が安全 |
不要 | 要 |
| 保管 | 本人 | 原本 公証役場 正本 本人 |
本人 ※作成した事実を公証役場で記録される |
| 費用 | 不要 ※後で検認費用が必要 |
要(作成手数料) |
要
(公証人の手数料) |
| 検認手続 | 必要 | 不要 | 必要 |
| 遺言の存在の 秘密 |
確保できる | 確保できない | 確保できない |
| 遺言の内容の 秘密 |
確保できる | 確保できない ※弁護士が証人になる場合は守秘義務により実現可 |
確保できる |
|
本人の遺言か どうかの 争いの可能性 |
高い | 低い | 低い |
| 効力の争いの 可能性 |
高い | 低い | 高い |
| 変造等の恐れ | 多い | 少ない | 少ない |
| 滅失・隠匿の 恐れ |
多い | 少ない | 多い |
