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法律相談に関するQ&A
3 生前贈与や遺贈による共同相続人間での不公平感の解消
特別受益とは、相続人が贈与や遺贈を受けた時に、他の相続人との公平を期するために相続分から差し引く制度です。
被相続人の死亡後は共同相続人間で法定相続分に従って遺産を相続するのが原則です。 ところが、共同相続人のうちで、被相続人から遺贈や結婚の際の持参金をもらったなど被相続人から婚姻、養子縁組または生計のための贈与を受けた者がある場合は、それら贈与をまったく何らの考慮もせずに法定相続分に応じてさらにそれらの者に遺産を取得させることは、共同相続人間の公平を害することになります。
そこで、生前贈与などの特別受益を受けた者がある場合は特別受益分を考慮して計算し、被相続人が死亡時に有していた財産の価値に、生前に贈与された財産の価値を加えたものを相続財産とみなします。そのようにして計算した相続財産に法定相続分をかけて算出した価値から、生前贈与を受けた分などの特別受益分の価値を差し引いた金額を、特別受益を受けた者の相続分とします。
このようにして、相続人のうち特定の者が生前贈与や遺贈を受けていた時は特別受益として相続分から差し引くのです。ただし、贈与・遺贈が相続分よりも多くても、返還を請求することはできません。特別受益が生じている場合は、相続開始時点で持ち戻しの計算を行うことになっています。
したがって相続開始時の時価を評価して持ち戻し後の金額を計算した上で各人の取得割合を計算し、その後、遺産分割時の時価評価に基づいて各自の具体的な取得割合を決めて分割を行います。 結婚や養子縁組をした際の持参金や住まいや商売用の店を出すために不動産をもらった場合などが典型的な特別受益の例です。遺贈についてはどのような遺贈かにかかわらず全て特別受益になります。
これに対して、生前贈与については、持参金、新居、道具類、高額の結納、高額の新婚旅行費用などの婚姻のための贈与、養子縁組のための費用、高等教育の学費、家、営業用のトラックなど、生計の資本としての費用だけが特別受益になります。結婚式の費用については原則として特別受益にならないと考えられていますが、審判例では共同相続人中に既婚者と未婚者がいる場合には、特に多額ではない結婚式挙式費用も特別受益として考慮すべきであるとしたものもあります。学費に関しても、特に1人だけに高等教育を受けさせる場合は特別受益となるものの、大学進学率が高い現在の状況下では、特別高額の場合を除いて大学の学士程度であれば特別受益に当たらないと考えられています。
とはいうものの、特別受益として認められた場合もあります。生命保険や退職金については、特別受益になりえます。最高裁は生命保険金について、相続人とその他の共同相続人と間に生じる不公平が著しい場合には、保健金の額や遺産総額に占める比率、同居の有無、被相続人の介護などに対する貢献の度合いなどを総合考慮して、払い戻しの対象になることがあるとしています。
退職金については、支給を受ける遺族の生活保障を目的としているという点で生命保険金に近いと考えて特別受益に当たらないとする事例と、賃金の後払い的性質を持っており、遺産に似ているとして特別受益にあたるとする審判例があります。遺族年金や特別弔慰金については、特別受益に当たらないとするものがほとんどですが、死亡弔慰金について特別受益として認めた事例もあります。
生前の贈与が特別受益に当たる場合、現金の場合は貨幣変動を考慮した上で相続開始時の貨幣価値で計算します。土地や株式は贈与を受けた後に売却したとしても、現物があるものとして相続開始時の評価額・株価で計算します。 特別受益にあたるとされても、被相続人が持ち戻しを免除した場合は持ち戻さなくてもいいのですが、持ち戻しを書面ではっきりと免除していることは少ないので、黙示の持ち戻しの意思表示があるといえるための認定基準が問題になります。
この認定に当たっては、贈与した経緯、趣旨、その他被相続人が受贈者から利益を得ていたかどうかなどを総合的に考慮して黙示の意思表示を認定しています。持ち戻し免除の意思表示が遺留分を侵害する場合は、遺留分減殺請求がなければ遺留分を侵害する持ち戻し免除も有効ですが、遺留分減殺請求がある時はこれを持ち戻して遺留分の算定をすることになり、その限度で持ち戻し免除は無効になります。持ち戻し免除も、遺留分減殺請求をされた場合には万能ではないということです。
